契約書、保険の約款、税金の通知、利用規約。読んでいて意味の取れない言葉が出てくると、つい目が滑って読み飛ばす。そして後になって「ああ、そういう意味だったのか」と損をする。難しい言葉の解説を作っていると、つまずく人ほど共通して、定義を定義のまま頭に入れようとしているのが見えてくる。実は、コツはそこにある。
なぜ、読んでも入ってこないのか
例として、税金まわりでよく出る「課税所得」を使う。きちんとした定義はこうだ。「課税所得とは、各種所得の金額の合計額から所得控除を差し引いた金額」。
……どうだろう。たぶん、読み終わった瞬間にはもう頭から抜けている。悪いのはあなたの理解力ではなくて、この文が専門用語で専門用語を説明しているからだ。「所得」も「控除」も、それ自体がふわっとしている人にとっては、知らない言葉で知らない言葉を定義されているのと同じ。抽象を抽象のまま覚えようとすると、当然すべる。
同じ言葉を、3ステップでほぐしてみる
では、さっきの「課税所得」を最後までほぐしてみる。やることは3つだけだ。
① まず、ざっくり一言に言い換える。 正確さはいったん脇に置く。課税所得は、要するに「税金がかかる“もうけ”の部分」。これくらい乱暴でいい。まずイメージの取っかかりを作るのが目的だ。
② 具体的な数字を1つ当てはめる。 たとえば、年間の収入から経費を引いた所得が300万円。そこから所得控除が100万円あったとする。すると課税所得は 300 − 100 = 200万円。この200万円に対して税率がかかる。数字を入れた瞬間に、さっきの定義文が急に「ああ、引き算のことか」と腑に落ちる。
③ 自分のケースに置き換える。 最後に「じゃあ自分はどうだろう」と当てはめてみる。自分の所得はいくらで、使える控除は何があって、だから課税される部分はこれくらい——ここまで来て、知識はようやく“使える”状態になる。読み飛ばしていたときとは、見え方がまるで違うはずだ。
このやり方、分野が変わっても効く
おもしろいのは、このほぐし方が分野を選ばないこと。法律や制度の「〇〇権」「義務」、お金の「控除」「課税所得」、ITの「API」「トークン」、医療の専門用語。中身はぜんぜん違うのに、つまずき方は同じで、対処法も同じだ。「定義」ではなく「仕組み・役割」で捉える。「これは要するに、何をするためのもの?」と問い直すクセがつくと、初めて見る言葉でも崩しにかかれる。
自分でほぐすのが面倒なときは
とはいえ、毎回自分でたとえ話と具体例を作るのはしんどい。その下ごしらえを済ませてあるのが シンプリだ。法律・制度/お金・税金/ビジネス/テクノロジー/健康・医療/社会・ニュースの6分野について、難しい言葉を絵と表とたとえ話で、1記事5〜6分で読めるようにしている。用語から検索できて、関連する話題はシリーズでまとまっているので、ひとつ調べると芋づる式に周辺まで分かる。最後にクイズで定着も確かめられる。登録不要・無料だ。

難しい言葉は、頭の良し悪しでつまずくわけじゃない。抽象を抽象のまま飲み込もうとするから喉につかえる。一言に言い換えて、数字を当てて、自分の話に引き寄せる。この手順を一度覚えてしまえば、契約や税金の「わからない言葉」で静かに損をすることは、ずいぶん減る。


